設計事務所からの提案書に「設計監理」という項目があり、これが何に対する費用なのか判断しかねている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
図面ができれば設計者の役割は終わり、あとは工事会社に任せればよいと考えると、監理は余分な費用に見えてしまいます。けれども工事監理は、建築士法に位置づけられた業務です。しかもクリニックの場合、その価値は工事期間中の限られた瞬間にしか行使できません。
この記事では、工事監理という業務の中身と、設計監理方式と設計施工方式の構造的な違いを、当社が実際に現場で判断していることを交えて整理します。
設計監理とは何を指すのか

設計監理とは、設計者が図面を描くだけでなく、その図面どおりに工事が行われているかを工事中に確認するところまでを担う進め方です。一般に、設計と工事を別の会社に発注する形(分離発注)と組み合わせて使われます。
呼び方が複数あるため、まず言葉を整理しましょう。
工事監理と設計監理の違い
工事監理は法律上の用語です。建築士法第2条第8項では、その者の責任において工事を設計図書と照合し、設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することと定義されています。
設計監理は、設計と工事監理をあわせて呼ぶ実務上の言い方です。監理費や設計監理料という表現も、この業務に対する費用を指しています。
法令上の工事監理者は、建築基準法第2条第1項第11号でも建築士法の定義を引く形で規定されています。
確認申請書の第二面には工事監理者を記載する欄があり、未定の場合は着工前に定めて届け出ることが国土交通省の様式で求められています。
つまり工事監理者は、現場を見に行く人ではなく、書類の上でも責任の所在が特定される役割だといえます。
監理者が現場で確かめていること
工事監理者は、施工者が作成した施工図(設計図をもとに、実際に加工や取り付けができる精度まで描き起こした図面)を着工前に確認します。
工事が始まってからは、下地や配管が壁や天井で覆われる前に現場へ入り、設計図書との照合を行います。仕上がってからでは見えない部分ほど、確認の機会は限られます。
建築士法第18条第3項では、設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは施工者に指摘し、従わないときは建築主に報告することが定められています。指摘して終わりではなく、発注者に伝えるところまでが業務に含まれます。
クリニックで監理の価値が高くなる理由

クリニックは、引き渡しの後に壁を開けられない建物です。診療が始まれば、確認のために天井を外す判断は現実的ではなくなります。
閉じる前にしか見られない部分がある
天井裏を通る配管やダクト、電源の配線、壁の中の下地とアース、レントゲン室の遮蔽材の施工は、いずれも隠蔽部(仕上げ材で覆われて見えなくなる部分)に収まります。
これらは、図面どおりの材料と寸法で施工されているかを、閉じる直前に見なければ二度と確認できません。監理の価値が工事中のその瞬間にしか行使できないというのは、この意味においてです。
ラカリテでは素材の品質基準と設計基準を社内で定め、中間検査と社内検査を実施しています。基準を持っておくことで、現場ごとに判断がぶれにくくなります。
検査の節目が開院日に直結する
クリニックの工事は、着工前の施工図と施工計画の確認から始まり、隠蔽前の中間検査、設備の試運転、社内検査、完了検査へと進みます。
その後に控えるのが、保健所の立入検査と消防検査です。ここに合格しなければ開院日を動かすことになるため、監理の工程管理は開業スケジュールと直結しています。
検査の運用や事前協議の要否は自治体によって異なります。所轄の保健所と消防署に早い段階で相談し、求められる書類と日程を確かめておく必要があります。
ラカリテでは開業希望時期から逆算してスケジュールを組み、医療機器やLAN、看板などの期日も提示しています。工事契約の外にいる業者の搬入と施工が同じ現場で走るため、その調整も監理の仕事に入ります。
クリニックの工事監理や進め方に不安がある方は、医療施設の設計に特化した当社にお気軽にご相談ください。
設計監理方式と設計施工方式の構造的な違い

両者の違いは、優劣ではなく、提案する側と査定する側が分かれているかどうかという構造の差にあります。
設計施工方式は、設計と施工を1社が一括して担う進め方です。図面が固まってから見積が出るまでが早く、施工者が設計意図を理解しているため、現場での伝達も滑らかに進みます。
一方の設計監理方式では、設計者と施工者が分かれます。複数社から見積を取り、内容を精査したうえで施工者を選べる反面、見積の作成と比較に2週間から1カ月程度を見込む必要があります。
追加工事の妥当性を誰が判断するか
工事が進むと、追加工事や変更工事が生じることがあります。このとき論点になるのは、金額の妥当性と、その工事が本当に必要かどうかです。
設計施工の一括発注では、工事を提案する側と、その金額を査定する側が同じ会社になります。これは不誠実という話ではなく、構造としてそうなるという意味です。
設計監理方式では、発注者の側に立って金額と必要性を確認する人がいます。見積の精査を第三者的な立場で行える点が、この方式の実務上の利点だといえます。
設計料そのものの内訳と考え方は別の記事で整理しています。
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設計監理を分けないほうがよい場合

設計監理が常に最適とは限りません。分離発注には、発注者側にも負担が生じます。
契約先が2社に増えるため、打ち合わせの窓口も2つになります。見積の比較に時間がかかり、着工までの期間は一括発注より長くなりがちです。
内装の一部を更新するだけの小規模な改装や、間取りを変えずに仕上げ材を張り替える工事では、確認すべき隠蔽部が限られます。工期を優先したい場合も含め、こうした条件では一括発注のほうが結果的に無理がありません。
判断の軸は、隠れて見えなくなる部分の多さと、開院日の動かしにくさにあります。設備を新設し、保健所や消防の検査を受ける規模であれば、監理を分ける意味は大きくなります。
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よくある質問(FAQ)
設計監理と工事監理は違うのですか
工事監理は建築士法に定義された業務で、工事を設計図書と照合して確認することを指します。設計監理は、設計と工事監理をあわせた実務上の呼び方であり、指している中身はほぼ重なっているといえるでしょう。
設計監理の費用はどのくらいですか
工事の規模や用途、業務の範囲によって変わるため、一律の目安を示すことは適切ではありません。基本設計、実施設計、工事監理のどこまでを含むのかを確かめたうえで、見積を比べてください。
設計施工とどちらを選ぶべきですか
新設や大規模な改修で、設備工事と各種検査を伴う場合は設計監理が向いています。仕上げ材の更新が中心で工期を優先したい場合は、設計施工のほうが進めやすくなります。
監理者は現場に何回来るのですか
回数はあらかじめ決まっているものではなく、確認すべき節目に合わせて設定します。着工前の施工図確認、隠蔽前の中間検査、設備の試運転、完了検査などが主な節目です。契約前に頻度と報告の方法を確認しておくと安心でしょう。
内装工事だけでも設計監理は必要ですか
新たに配管や電源を引き、レントゲン室などを設ける場合は必要性が高くなります。仕上げの張り替えが中心であれば、必ずしも分離する必要はありません。
監理報告書は受け取れますか
工事監理の結果は、報告書として建築主へ提出されます。どの節目でどのような形式の報告を受けられるのかは、契約の段階で確かめておいてください。
クリニックの設計監理のご相談はラカリテへ
工事監理は、図面を描いた責任を工事の完了まで引き受ける業務です。壁の中や天井裏が閉じられる前という限られた瞬間にしか確認できないため、後から取り戻すことができません。
当社は一級建築士事務所(東京都知事登録 第61976号)であり、特定建設業許可(特-3 第146367号)も併せて持っています。設計から施工、検査までを一貫して見届ける体制を整えており、引き渡し後のアフターサポートはグループ会社のラカリテアシスタンスが担います。
設計監理を分けるべきか、一括で進めるべきかは、物件の条件によって変わります。開業希望時期とあわせてお聞かせいただければ、その計画に合う進め方をご提案します。







