クリニックモールや医療モールでの開業を考えるとき、内装や区画の設計を誰に任せるかは、診療のしやすさと患者さんの印象を左右します。戸建てやテナント単独の開業と違い、モールには複数の診療科や調剤薬局が同居し、共用部とテナント区画が入り組むのが特徴です。
そこで本記事では、クリニックモールの設計を設計事務所に任せる意味と、モールならではの判断の勘所を、医療施設の設計に携わる立場から整理してお伝えします。
クリニックモールと医療モールはどんな施設か

クリニックモールは、ひとつの建物や敷地に複数のクリニックが集まる施設を指し、医療モールとも呼ばれます。内科や整形外科、皮膚科といった異なる診療科に調剤薬局が加わり、患者さんが一か所で複数の用事を済ませられる点が大きな魅力です。
増えている背景には、医療を取り巻く環境の変化があります。厚生労働省の令和6年医療施設動態調査によると、病院が減少する一方で、入院ベッドを持たない無床診療所が増加しています。外来を中心とする開業が広がるなかで、複数の科が集まって患者さんを呼び込めるモール形態は、開業医にとって選びやすい受け皿になってきました。
モールにはいくつかの形態がある
ひと口にクリニックモールといっても、その姿はさまざまです。複数の戸建てクリニックがひとつの敷地に並ぶタイプ、医療ビルの各フロアにテナントとして入るタイプ、商業施設の一角に組み込まれるタイプ、住宅やオフィスと併設されるタイプなどがあります。どの形態を選ぶかによって、設計で気を配るべき点や使える工夫が変わってくるため、計画の早い段階で形態を見極めておくと安心でしょう。
クリニックモールの設計に設計事務所が関わる意味
戸建てのクリニックであれば、建物全体を一から設計できます。一方でモールの場合は、建物の骨格や共用部がすでに決まっていて、その中の区画を活かす設計になることが少なくありません。与えられた条件のなかで診療動線や設備を成り立たせる力が問われるのが、モール設計の難しさです。
共用部とテナント区画の境目を読む

モールでは、エントランスや廊下、トイレ、エレベーターといった共用部と、各クリニックが借りるテナント区画が分かれています。どこまでが共用で、どこからが自院の責任範囲なのかを正しく読み解くことが、設計の出発点になります。給排水や電気の引き込み位置、天井裏のスペースといった条件は区画ごとに異なり、図面を読み込まないと見落としやすい部分です。設計事務所が早い段階で図面を確認しておくと、契約後に想定外の制約が見つかる事態を避けやすくなるでしょう。
限られた区画で診療動線を成り立たせる
モールの区画は、必ずしも理想的な形をしているとは限りません。細長い区画や柱の多い区画でも、受付から待合、診察室、処置室、会計までの流れを交差させずに組み立てる工夫が求められます。医療施設の設計に慣れた事務所であれば、限られた条件のなかでも患者さんとスタッフの動きが自然になるレイアウトを描けるでしょう。設計の良し悪しが日々の診療のしやすさに直結するからこそ、区画設計の経験が物をいう場面です。
クリニックモールでの区画設計や動線の組み立てに悩んでいる方は、医療施設の設計に特化したラカリテにお気軽にご相談ください。
モールの設計で見落とされやすい視点

隣り合う診療科への配慮
モールでは、壁一枚を隔てて別の診療科が診療しています。診察室の話し声が漏れない遮音の工夫や、待合の見え方への配慮は、患者さんのプライバシーを守るうえで大切です。隣接するテナントとの間で音や視線がどう伝わるかを設計段階で検討しておくと、開業後の思わぬ行き違いや苦情を防ぎやすくなります。
調剤薬局や共用部との位置関係
多くのモールには調剤薬局が併設され、診察を終えた患者さんがそのまま立ち寄る動きが生まれやすい場所です。自院の出入り口と薬局、共用の待合や通路がどうつながるかは、患者さんの回遊のしやすさを大きく左右します。受付や会計の位置を共用部の人の流れと合わせて考えておくと、混雑やすれ違いを抑えやすくなるでしょう。建物全体の人の動きを読みながら自院の区画を設計できるかどうかは、モールならではの腕の見せどころです。
将来の入れ替えや拡張を見込む
モールは、テナントが入れ替わったり、自院が手狭になって区画を広げたりすることもあります。配管や配線を後から動かしやすくしておく、間仕切りを変えやすい造りにしておくといった備えがあると、数年後の変化にも柔軟に対応できるでしょう。今だけでなく先を見て設計できるかどうかは、長く使う施設だからこそ大切にしたい視点です。
バリアフリーと安全への対応
クリニックには、車いすやベビーカーの方、足の不自由な高齢の患者さんなど、多様な人が訪れます。共用部と自院の区画をなめらかにつなぐ段差のない動線や、広めの通路は、安心して通える環境づくりに直結します。建物全体の基準に自院の区画を合わせ込む調整も、モール設計ならではの仕事です。
設計事務所に相談するときに伝えたいこと
設計事務所へ相談するときは、診療科と想定する患者数、診察室や処置室の希望数、導入したい医療機器のおおまかな種類を伝えておくと、話が早く進みます。検討しているモールの図面や区画の資料があれば、あわせて共有すると、その区画で何が実現できるかを早い段階で見極めてもらえるでしょう。まだ区画が決まっていない段階でも、相談する価値は十分にあります。図面を見れば、希望する動線が組めるか、設備の増設に無理がないかを判断でき、区画選びそのものに設計の視点を活かせるからです。
クリニックモールの設計はラカリテにご相談を
クリニックモールの設計は、与えられた区画の条件を読み解き、限られた広さのなかに診療動線と設備を成り立たせる仕事です。共用部とテナント区画の境目、隣り合う診療科への配慮、将来の入れ替えや拡張への備え、そしてバリアフリーへの対応という、モールならではの視点を押さえられるかどうかで、開業後の使い勝手は大きく変わってきます。医療施設の設計に慣れた事務所に早い段階から相談しておくことが、後悔のない開業への近道になるでしょう。
ラカリテは、医療施設の設計と内装を専門とする設計事務所として、新規開業から分院展開、承継にともなう改修まで幅広くお手伝いしています。クリニックモールや医療モールでの開業を検討している段階でも、まずは思い描いている診療の姿と、気になっている区画の情報をお聞かせください。区画の見極めから設計まで、一緒に考えていきましょう。






